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過去の「ほぼ演劇日記」 保管庫(2013年10月〜12月)


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またまた3か月近くご無沙汰でした〜(^_^;)
 ご無沙汰です。また3か月間、「ほぼ観劇日誌」をほったらかしにしてしまいました。ごめんなさい。
 基本、速報性があり、また出演者や関係者の方に見てもらいやすいツイッターで感想を呟くことが多くなってしまっているので、どうしてもこっちはお留守なんですよね〜。とはいえ、後々に自分で見返すときには明らかにこの方が見やすいのも事実。
 ということで、ツイッターまとめと小コメント程度になってしまうと思いますが、一気に19作品分の感想を書いてしまいます!

一生懸命生きることとそのレッテルと(simple×sample's「背信〜sample ver.〜」感想)
・8/23観劇。ちなみに、ネタバレ「アメックスが悪い」。
・場が暗転で明確に移っていくのだが、それは現代→過去という流れ。その中で、「なぜあんな会話やしぐさだったのか」という謎が、徐々に明らかになっていく。非常に演出家と役者の能力が試される作品だなあと。それを奇をてらうことなく、しっかりと役者力だけで見せきった(少なくとも見せ切ろうとした)姿には拍手。
・simple×sample'sは「余計な演出、演技はせずシンプル(本質)にこだわり、ドラマの面白さを追求して、よりリアルな反応と臨場感を味わえる舞台を作っていくのが目的」とのこと。なかなか昨今の小劇場界ではあまりみないスタイルであり、だからこそ斬新さも感じてしまったり。
・ちなみに、奇妙な三角関係が描かれた本作。「背信」というと非常に不道徳なことに思えるけど、でもそれぞれに一生懸命生きていたことの証でもあるのかなとか。逆に、一生懸命に生きてきた人生の結果がたとえ不道徳なことであったとしてもそれを追求すべきでないのが、大人なのかなとか。大人な雰囲気の舞台と役者さんを見ていてそうも感じました。
(2013/12/8まとめ書き)

大人にも見てほしいファミリー劇場(兵庫県立ピッコロ劇団「ファミリー劇場「星つむぎの歌」」感想)
・8/24観劇。いい意味でピッコロ劇団のいつものスタイルを超えた意欲作。作者の「これを伝えたい」という思いが、粗削りだからこそ、伝わってくる。ファミリー劇場なれど、大人にこそ見て欲しい作品。
・正直忘れ始めているのですが(苦笑)、確か両親が離婚した小5ぐらいの女の子が主役のお話だったかなと。で、最後まで両親が和解するわけではないんだけど、それはそれとして受け止めて前に進んでいく姿がとても素敵でした。若干個人的な思いも入ってますが。
・「どうして結婚なんてするんでしょうね」(苦笑)
・女の子(琴子)役の道幸千沙さんが本当に素敵な少女を演じていました。また、キャラクターがそれぞれに非常にキャラ立ちしており、大人にも楽しすぎです!
・歌の入れ方とか、舞台セットとか、なんとなく音楽座ミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」を思い出したんですが、実はこの作品の演出家・小安展子さんは音楽座にもいたことがあるそうでちょっと納得。
・12月には芸文センターで、今度は子供たちを交えての再演。少なくとも1回はぜひ見に行きたいと思っています。
(2013/12/8まとめ書き)

三田の夏、さくらとほたるとその次と(三田市民演劇「さんだほたる第3章 〜未来(あした)へ〜」感想)
・8/24観劇。『「私だってスカートぐらい履くんだからね」というのはフラグだなあ。』とつぶやいていていました。結構恋愛テイストのお話であったと記憶しています。
・第1章と同じく、また滑り台&池が登場。それだけでテンション上がりますよね!もちろん、レベルの高い蛍ダンスは健在。まだまだ知っている人も何人かいてそれも嬉しかったです。
・それほどスッキリとした終わり方ではなかった気もしますが、ラストの下手からの声掛けが第1章につながっていたのかなとか。3年間で1作品という部分もある意味あるんでしょうね。
・個人的には自分のかかわった「夏ざくら第3章・瞬間」が、脚本・役者・ダンスシーンのレベルなど、いろんな意味で最高傑作と思っていますが、まあ、ピッコロの卒公と同じでそんなもんなんでしょうね。特に大西真由&石井忍&本多祐葵3人のダンスシーンは一度でいいから正面から見てみたかったなと(幕の介助で舞台裏に待機せざるを得なかったのです)。
・おそらく来年度からは新シリーズ。「夏ざくら」「ほたる」ときて、次は何になるのか。どこまで見に行けるかわかりませんが、出演者の方の成長や変化も非常に楽しく、できる限り追い続けたいと思っています。
(2013/12/8まとめ書き)

よんすての新境地(演劇 四次元STAGE「宇宙 魅たことか」感想)
・8/25観劇。地球脱出用の移民船チケット当選をめぐる様々な悲喜劇。オカピーお得意の小作品をうまく繋げており、あまり重複感もなく、楽しくみることができた。移民省の役人役のホリベエとおはまが、全体を上手く繋いでいた。
・やなさんは相変わらずの芝居巧者。場面場面の雰囲気の切り替えが絶妙。一方、ササさん、ちのちゃん、みー君は自分の持ち味を前面に出すタイプだけど、それもそれで心地よい。主催のオカピーさん、相変わらずいい人発掘してくるなと。
・オールドメンバー(?)も、それぞれ活躍。ホリベエ・オカピーはヤクザ編が実に楽しそうで、古さんはカドクラ夫人が楽しそう。長老のこのメンバーの中では異質な存在感も、うまく効いていた印象。まっそさんのオープニング、回収されたのかされなかったのか、ちょっとわからなかった。
・いずれにせよ、1?3回目と同じ雰囲気を見せながら、レベルという点では違った芝居でした。(特にオープニングとエンディングでそれを感じました)。この集団がどっちの方向に、どう成長していくのか、新しいメンバーと共に楽しみなのです!
(2013/12/8まとめ書き)

おしゃれな雰囲気の、おしゃれじゃない世界(兎桃企画×劇的集団まわりみち'39×菅原ゆうき「許される許されざるに拘らずただ足枷の花束を抱いて」感想)
・8/25観劇。おしゃれな会場、おしゃれな美術、おしゃれな音楽、おしゃれな音楽、おしゃれな役者陣。しかし、内容はかなりドロッとしたもの。「普通って何?」いろんな言葉が、それぞれの世代に、ある意味痛切に投げつけられる。
・役者陣はピッコロ出身者の中でもそこそこに定評のある人ばかりであり、物言いやしぐさで場の空気を作り出すのはお手のもの。難しい題材をよく調理していた。また、抑制気味なれどきちっと細かい仕事をする照明、何もない舞台におしゃれなマンションの一室を想像させる舞台美術は見事。
・狭い舞台の使い方が上手で、このあたりは2回目ならではかなと。舞台装置の配置も実に考えてあって良い。あえて言えば、やはりスマホというのは本当に舞台上で使いにくいなと(かといっていまさらガラケーも嘘っぽいし)。もっと違う表現方法はないのか、私もちょっと考えてみたいと思います。
・2655でも思ったけど、ほんとこんな作品をかく作者の頭の中ってどうなってるんでしょうね。私にはとても思いもつかないのですけど…。自分は役者でも作家でも演出家でもないのですが、人と頭の中という点で、ちょっとだけ興味がわいてきました。ともあれ、関係者の皆様、お疲れさまでした!
(2013/12/8まとめ書き)

普通であるが故の怪作(悪い芝居「春よ行くな」感想)
・8/27観劇。三角形のテーブル状のような舞台(周囲には人の座っていないパイプいすがたくさん並ぶ)、ドラムセットやら鉄パイプやらを含む音響、ミラーボールやLED、白色電球などをこれ見よがしに見せる照明、不思議な所作と物言い…とにかく凄い作品というか、怪作。
・しかしながら、描かれる物語は実に『普通の』女性のお話。それが正方向の時系列に(バナーを次々に広げていくという示し方も見事)呈示される。個々のエピソードは多少荒唐無稽。とはいえ、誰にでも思い浮かぶ節の有るような人生の中のとげの出来事を、一見さらっと、しかし嫌らしく描いている。
・見てはいけないものを見ている気にさせられるのは、いきなりセックスシーン(未遂だけど)から始まるからかもしれない。性的なモチーフ(妊娠・出産を含めて)が意外と多かったが、20代〜40代を描こうとすればそこは避けて通るべきではない。その欺瞞性を表現したようなセリフもあった。
・個人的には、決して悪い芝居は好きではない。まず登場人物の名づけ方が嫌いだし、舞台美術は直島ベネッセアート風、その場で演奏はままごと風、所作や物言いは柿食う客風にも見えてしまい、総じておしゃれだけどね〜と思う側面もある。ただ、それを越えるパワーが明らかにあるのも事実。
・小学校6年生の2学期の修了式後、全員が帰宅した後の教室で一人になったことがあった。綺麗に片づけられた机の間を歩きながら、「ここに座っていた一人一人はこれまでどう生きてきて、どんなお正月が待っていて、どんな将来があるのかな」と考えたのを、窓の外の神戸の景色とともに、よく覚えている。
・今回の作品は決して特殊な人の話ではなく、あなたの隣にいる、あるいはあなた自身に近い、普通の人(女性)の話なのだろう。街で普通にすれ違っている一人一人の中には、莫大な量のさまざまな思いや願望や失敗や出来事が詰まっている。そして、それを心の奥底に隠し持って、人は今日も歩き続ける。
・あまりに衝撃的かつ見事なラストシーン。向こうに広がるのが現実世界なのか、あるいはスクリーンの中なのか。この部分を東京公演でどうされるのかも、正直、舞台装置好きには気になるところではあります。いずれにせよ、存分に楽しめました。誘ってくださった方々、どうもありがとうございました。
(2013/12/8まとめ書き)

旬なものを描くことの難しさ(ステージタイガー「BUMP!」感想)
・9/8観劇。「人形峠」の話が明らかに下敷きになっており、これを知っているのといないので、明らかに感じ方が変わってくるのではないか。それを明らかにするならするで違ったアプローチになるだろうし、しないならしないで、もっと違った世界観を作るべき。
・3.11後の演劇として放射能や放射線に関する掘り下げも不十分。真のチャンピオンとは何かを表現するならこんなに特殊な舞台を設定する必要はないし、特殊な舞台を設定するなら、明示的であれ非明示的であれ、「福島後」の社会に向けた何らかの働きかけやら提言やら警鐘やらが必要なのでは。
・今回非常に力が入っているのは観劇中もずっと感じていたが、設定も含め、から滑りしがち。特に照明、音楽がとっておき的なものを多用し過ぎで、ずっとハイテンションでは2時間疲れてしまう。密度が濃いといえば濃いので、圧倒はされるのだが、それだけで終わってしまいかねない。
・そもそもステージタイガーは社会の在り方を描くというよりも、個人の在り方や生き様を描きたい団体のはず。とすれば、社会的議論を巻き起こしそうなセンシティブな題材は、主題の明確化という意味でも極力避けるべきではないか。それが自分にとって思いが強ければ強いほど、なおさら。
・とはいえ、安定のレギュラーメンバーとアクセントの強い新規メンバーの取り合わせは楽しく、心が踊る。オリンピックの開催地決定を見ていて寝不足気味であったが全く眠気を感じることもないテンポとドラマの良さは流石ステージタイガー。良いからこそ感じることも多い訳で、次回作もまた楽しみなのです(*^^*)
(2013/12/8まとめ書き)

とにかく楽しいシェイクスピア!(兵庫県立ピッコロ劇団「間違いの喜劇〜現夢也双子戯劇〜」感想)
・10/12観劇。シェイクスピアの原作を喜志哲雄氏が日本・江戸時代(風)に翻案。セリフも、衣裳も、物言いも、話の筋書きも、時代背景も、どれもがどこか「間違い」なのだが、それこそが喜劇としての楽しさを呼んでいる。掛け値なしに楽しい作品。
・ピッコロ劇団の方々も実に楽しそうな演技。2組の双子の演技は本当に一卵性双生児のよう。男性陣のしっかりとした演技の上に、自由奔放に個性を主張する女優陣が、さらに喜劇を重層的にしている。皆さんそれぞれに面白いのだが、特に木全ファンの皆様は必見かと。
・しかしすごいと思ったのは、シェイクスピアという400年ほど前のストーリーを、約200年前の江戸時代に翻案したものが、現代でも全く輝きを失っていないこと。喜志氏の翻案能力の高さとシェイクスピアの普遍性を改めて認識。最近のピッコロ劇団、当たりの公演が多く、ますます楽しみなのです。
(2013/12/8まとめ書き)

今の世代の夢と現実と本当と嘘(劇的集団まわりみち'39「ジョン・レノンともう一度」感想)
・10/13観劇。残念ながら私には若干難解すぎたというか、どこまでが夢で、どこまでが現実で、どれが本当で、どれが嘘なのか、正直つかみ切れなかった。もちろん、よいセリフ・よいシーンも多く、舞台上での感情に嘘はないのだが…。
・正直、なぜこの主題を扱うのに(今の若い人にとってもなじみが強くないであろう)ビートルズなのか、というのが強く疑問として残った。人々それぞれの思い、夢と現実、夢をかなえたあとに見えてくる現実、そして失敗がわかっていながら乗り込んでゆく勇気。それぞれはみな素敵なモチーフなのだが。
・役者は皆さん本当に熱演。面識があるからかもしれないが、慶雲氏とえりちょん氏が小気味よい演技をされていた。他の方も表に裏になかなかの好演。独特の会場の構造を使った立ち位置もよく練られていたように思える。音響・照明もいろいろと厳しい条件の中、決して嫌味ではなく空気を作り出していた。
・個人的には多少なじめない芝居でしたが、そのあたりは世代のフィーリングの違いかもしれない、とトランスを見ながらあたらためて感じたり。斜あゐりさんの脚本は決して嫌いではないので(兎桃企画の時の作品は好きだった)、個人的にはまた次のお芝居を見てみたいとも思っています。
(2013/12/8まとめ書き)

過ぎ去る時代と過ぎ去らない何かと(Project SML「トランス」感想)
・10/13観劇。鴻上尚史の超有名戯曲で私も粗筋は知っていたものの、ちゃんと見るのは(記憶にある限りでは)初めて。上手な役者さんたちで安心してストーリーを堪能。決して超絶技巧、驚愕させるような舞台ではないけれど、しっかりと楽しめる作品に仕上がっていた。
・逆に個々人が上手な役者さんたちだからこそ、場の空気の転換やら群読やらに見え隠れする若干の甘さが気になってしまったり。逆に3人のやりとりは実に自然に流れたり。そのあたりは演出家を置かないことの功罪かなとか。音響、照明にも若干それは感じたり。決して気になるレベルではないのですが。
・今から見ると若干中二病的なセリフや、調べ物をするのにネットが出てこないなど90年代前半テイストが盛りだくさん。それは実に懐かしかったり。当時は、ソニックブームも竹蜻蛉も筑小もみんな鴻上やってたもんな〜。そういう意味で自分の観劇の原点に立ち返ったような面白さも感じていたのです。
(2013/12/8まとめ書き)

新たな彗星マジックの世界を切り開く(彗星マジック「チムニースイープ・ラララ」感想)
・10/13観劇。「定点風景」「アルバート」ときて、新たな彗星マジックの世界を切り開かんとした意欲作。社会や環境に翻弄されながらも健気に生きる人間を描くのは同じだが、合わせて社会をも描こうとしていた。その意欲は半分成功し、半分失敗した気がする。
・差別を描こうとすると、それがたとえファンタジーの世界であっても難しいなと。差別は個人の意識であると同時に、社会システムでもある。それを「誰ががしなくてはいけない煙突掃除婦」という見事な題材で描きつつも、被差別者の気づき(と社会が変わる雰囲気)という結論はあまりにも安直な気が。
・一方、音楽に乗せたセリフの物言い(「わが星」っぽいがちと違う)や絶対的な悪役の存在、性的なものを感じさせるシーンなど、勝山氏のチャレンジはおおむね成功している気も。「彗星マジック」らしい空気感を見事に作り出す音楽・音響・照明・衣裳などのスタッフワークも相変わらずお見事。
・ラララの米山真理さんは堂々の好演。また、スイープ3人娘はみな印象的で、特にリザ役の笹暮とと氏は差別と被差別の間に(半ば無自覚に)立つ少女をうまく演じていた。男性陣もみなよかったが、アナウンサー役の近藤ヒデシ氏と親方役の小永井コーキ氏が「厳しい芝居」という点で印象的。
・彗星マジック、最近では一番のお気に入り劇団なのでどうしても厳しくも甘くもなるものの、それだけ印象深い作品を毎回届けてくれるというのも事実。多少方向性の模索が続いている気がしなくもないものの、それもまた次の楽しみ。まずは、「シロとクロ/フルバージョン」楽しみにしています!
(2013/12/8まとめ書き)

言葉がわからなくても伝わってくるもの(順天市芸術団ほか「ミュージカル「太白山脈」」感想)
・10/19観劇。韓国全羅南道の小さな町が舞台の名作小説の舞台化。庭園博の成功を記念して順天市民に無料で提供…というのを見させていただいたので、もちろんオール韓国語。どこまでわかるかかなり不安だったものの、やはりミュージカルというのはちゃんと伝わってくるなあと。
・日本の植民地支配解放後から朝鮮戦争までの左右対立が基本の舞台で、兄が共産パルチザンの指導者、弟が自由主義の警察幹部という兄弟の話が主軸。そこに、パルチザンとムーダン(巫女)の恋愛話などが入ってくる。幸せな小さな町の人々がいやおうなしに左右対立に巻き込まれていく。
・いったん右に協力すれば、今度左が街を収めた時には弾圧(処刑)され、さらに入れ替わればまた協力したとのかどで処刑…。穏やかなこの地でそのような同族同士の殺し合いが行われていたというのは信じがたいが、その記憶というのは彼らの中に、この町に、間違いなく色濃く残っているはず。
・そして、そのようななかでも何とか生き抜く普通の人々(イデオロギーで動いていない人々)の姿が逆に感動的。そういう意味では、1幕ラストのパルチザンの行進(多少レ・ミゼラブル風)よりも、むしろ2幕スタートの市場のシーンの方がよほど力強いし、感動的。そんなことも感じました。
・円形の270度分ぐらいの八百屋の装置は非常によくできており、場面により石垣にも家の中にも縁側にも見える優れもの。片側だけの「太極旗」をイメージしているのかなとも。また水墨画風の書割が自然と人々の営みとの対比をよく表現。プロジェクターで鳥を飛ばしたりするのは多少やりすぎだが。
・照明はピンに迷いが見えたり、LEDやムービングの使い方があまりにも舞台と合っていなかったりと、さらに要努力。また音響は見事にバラバラで、トランペットの音が大きすぎてコーラスが聞こえにくかったり。「いい音響・いい照明」の基準が日韓で異なる可能性もあるが。
・芸能大国であり、主役級の方の歌のうまさはさすが。そして、アンサンブルが実にきれいでパシッとそろっている。この辺りも韓国の層の厚さを感じるところ。このミュージカル「太白山脈」は今後ソウルなどでの公演も想定されているようで、それもまた楽しみなのです。
(2013/12/8まとめ書き)

表裏ある作品、表裏ない熱演(ピッコロ演劇学校本科31期「Theme Stories 表と裏」感想)
・10/26観劇。ピッコロ演劇学校本科31期ピッコロパッソ「表と裏」観劇。年々レベルが上がる本科生、今年もそれぞれに見所の多い5作品。趣向はばらばらなれど、一生懸命作り上げたのはよくわかる。概して粒がそろっていた印象。28期の方には受けそうなセリフあり、学校としては衝撃的な体当たりシーンあり、マイムありムーブメントありと、見所もりだくさん。
・「うらびょうし」安定した、面白い作品。裏チームと表チーム、若干無理がある設定なれど(とくにお母さんの裏表)、それ自体も強引な演技・設定・衣裳と笑いで走り切ってしまうという強引さが逆に気持ち良い。1作目にふさわしい疾走感。
・「HEART START 〜通りがかりの黄土色〜」本科パッソらしい、葛藤→前向きスタートなお話。ただ、「なんですぐに救わないの?」とか「黄土色って何?」とかの疑問も残る。女子高生やらフリーターやら面白い役者さん多数。全員がそれぞれの役柄をきちっと演じたマイムは好感。
・「ある夜の物語」役者4人の粒がそろっていて、安心して楽しめる。4人の中で一番表裏のないカトリーヌさんは素か演技か。他の3名は(あくまでも演技だと思うが)海千山千感にあふれていた。卒公での活躍が楽しみ。ただ、ストーリー自体はありきたり。会話と演技を楽しむ作品かもしれない。
・「HOTEL」話の筋、役者、演技、全てにおいて賛否の分かれそうな作品。パッソで込み入った話をここまで演じきったのは評価するが、ストーリーを追うのに(台本も観客も)いっぱいいっぱいだった気も。ゆい子役の役者さんの体当たり演技には拍手。ここも個性豊かな役者さんが多く今後が楽しみ。
・「HO-RU」前作とは違った意味で賛否の分かれる作品。こちらはあえて狙ったのがわかるだけに、そのチャレンジ精神は賞賛。チャレンジをささえる全体としての演技力も相当に高い(厳しいけいこが垣間見える)。ただ、本科の中間発表としてはもうちょっとわかりやすい作品がよいかなという気も。
・確かにこうやって書き出してみると、どれもレベルの高い5作品でしたね。自分の出身校がレベルが上がっているというのは嬉しいものです。個性豊かな本科31期、卒業公演が楽しみです。
(2013/12/11まとめ書き)

おさんぽ1時間、空間と時間の旅へ(ままごと「おさんぽ演劇 さかのぼり、まだ見ぬ家へ」感想)
・10/31観劇。瀬戸内国際芸術祭のイベントの一つ。今を時めく劇団ままごとの看板役者である大石将弘氏が案内人。坂手の街を「おさんぽ」しながら、物語であるようなないような物語をみんなで発見し、紡いでいく時間。これを「演劇」と言うのかどうかは難しいけど、いわゆる「アート」であることは間違いないかなとか。
・もうネタバレしてもいいよね、ということで、ネタバレ行きます。
・まずは坂手港に集合。一人ひとつずつの小石を渡されます。それぞれに印をつけて旅の始まり。町の中にある様々な石垣やもはやオブジェと化した石臼など、この町にはさまざまな石があることが紹介されます。その後、その石をそれぞれ「気になった場所」においてきて、それを自分の携帯などで写真を撮ってくることが求められます。
・しばらくたって、ままごとの本拠地である学校跡(?)に再集合。お茶とお茶うけを振舞われながら、それぞれにおいてきた石と周囲の光景を見せ合います。その後、大石さんが置いた石を探しにみなで移動。どんどんと坂を上り、港を一望できるお墓のある場所へとたどり着きます。その際に、大石さんから実は自分の両親はこの町の出身者であること、祖母や祖父はこの町で暮らしてこの町に眠っていること(実際に「大石家の墓」の前を通りました。これがこのお話のきっかけだったのかな)、けれども特に父親はこの町があまり好きではなくて1回しか来たことはないこと…などが語られるのです。
・町が一望できる墓地は、過去の人々が眠る場所。そして、その下には空き地や空き家が増えつつも様々な思いが残る(自分たちが置いてきた石も残る)坂手の街があり、さらにその先には、様々な人がさまざまな思いを持って外の世界へと出ていった港が見えるのです。「さかのぼり」は「坂を登る」という意味でもあり、また「溯る」という意味でもあるんだなあと。静かな瀬戸内の港町がまた違った風景に見えてきました。
・「小さな身近な出来事から、大きな時間の流れを描き出す」という手法はまさに「わが星」やら「朝がある」とかと同じかなとか、演劇ファン的にはそんなことも若干感じました。
・いろいろと気づいたことも多く、そういう意味では「アート」なのは間違いなかったかなと。自分の置いてきた小石はいま、どうなっているのか、ちょっと気になっています。
・ちなみに、もう1作品、作・演出の芝幸男さんが案内人の「赤い灯台、赤い初恋」はうまくまとめた文書がありますのでご興味のある方はご覧ください。いずれにせよ、さすがままごとであり、やっぱり好きなのは間違いないのです。
(2013/12/11まとめ書き)

重さを残しつつも希望も描く(ピッコロ演劇学校研究科30期・舞台技術学校22期「闇の中の虹」感想)
・11/3観劇。これを中間でやってしまって卒公はどうするの?というほどの大作&好作。ゴーリキーの「どん底」が原作なので暗く重いかと思いきや、重さを残しつつも希望も描くピッコロテイストに見事に仕上がっていた。
・1列目下手で見ていたこともあってか、役者の熱量に圧倒される。特にオープニングのムーブメントは鳥肌が立つほど。狭い舞台から大量の人間の熱気と情念とが一気にホールを満たす。「新天地」や「人間監査」も彷彿とさせ、ピッコロ研究科の伝統が確実に生まれつつある印象も。
・メインの役柄の方はそれぞれにすごいが、太田あゆみさんと大西遥さんという芸達者なお二人の丁々発止のやり取りは十分な見ごたえ。男性陣のレベルも総じて著しく、巡礼者役の東浦弘樹氏は当たり役とはいえ、きちっと仕事。水谷亮太氏・小谷友両氏の洒脱な演技は舞台に複雑な光と影を与えていた。
・さらに、見事に死にゆく姿を演じきった土倉征子氏、新たな魅力を存分に発揮してくれた賀勢千尋氏、日常の中の狂気を演じさせると抜群の山田梨愛氏と、魅力的な役者が本当に多かった。これ以外の方でも、それぞれのエピソードがきちんと立っており、物語が進行していたように思う。
・そして、今回の眼目は言うまでもなく舞台美術。中間発表会のこれまでの常識を大幅に超えた物量は言うまでもないが、それがきちんと役者の導線や立ち位置と合っていたのもよかった。後方パネルも素敵だが、多少目立たなかった気も。木製ボックス2つはもしかして私たちの代に作ったもの?
・照明や音響も中間とは思えないきっかけの多さであったが、場面に違和感なく、役者の演技に乗ったオペレーションがこなせていたように感じた。とにかくこれまでの中間発表会の常識を覆すレベルであり、役者・舞台技術ともに卒業公演が実に楽しみになってまいりました!
(2013/12/11まとめ書き)

糠床は古くて常に新しい(いるかHotelクラッシック館「シンデレラ〜疾風怒濤〜」感想)
・11/8-10当日お手伝い&観劇。まずは劇の方の感想から。名作という惹句にたがわぬ名台本を、2013年に再現。決してきれいごとでは済まない、延々と続いてきた女性の生きざまを、約30年の月日が流れているからこそ、より鮮烈に描いている。
・「結婚して幸せになりましたとさ。おしまい」という女性の生き方に対する違和感は80年代も確かにあったのだろう。ただ、まだ何らかのアクションを起こした後に、その記憶(ガラスの靴)を持って王子様を待ちづつけることが許された時代なのかもしれない。そこは現代とは明らかに違う。
・一方、「探し続ける」ことに対する疑問というのは明らかに80年代のほうが薄かった気がする。というか、探し続ければ何かが見つかると本当に思っていたのかもしれない。最近の人々は「どうせ探したって何も見つからないよね」と本能的に諦めてしまっている。それはあまりよくない気もしている。
・ただ、「探す/探さない」「待つ/待たない」のいずれにせよ、生きるというのは覚悟を決めて一歩ずつ進んでいく、そしてそれに意味を見出していくことなのかもしれないなと。延々と生き続け代を重ねる糠床の話、そして、そこに入れる釘の話。したたかな命のつながり、女性のつながりなのかなとか。
・ちなみに糠に釘を入れるのは漬物の発色をよくするためだが、いま調べたところ、特にナスの色をよくするそうな。それが「健忘症のナスが自分が何に戻ったらいいのか忘れたので、ガラスの靴だけが残った」ことと掛けてあるのかも。とかく謎が多く隠されているテキストであることには間違いない。
・この難しい作品にいるかHotelの女優陣が真っ向から格闘。みなそれぞれに凄かったが、やはり孝子役・安部春香氏の場面で緩急つけた演技が印象に残った。またシンデレラ役のダブルキャスト・山田メアリー美貴氏と竹安江未氏も、全く違う印象だが、それぞれに覚悟の見える演技が好感。
・そして豪華なスタッフワーク。特に照明が小劇場の芝居としてはかなり多彩で効果的・印象的であった。また、時のつながりを表現したような舞台も決して芝居の邪魔にならず、しかししっかりとした存在感。怪しい音楽や小道具(パスタ大盛りとか)も含め、本当に豪華なスタッフワークであった。
・私は相変わらずあまりお役に立てなかった気もするが、温かく迎えていただき感謝。2回見ることができて、それもまたありがたい話。スタッフワークなども垣間見ることができた。さて、これをどう生かすかというと…待つ気も探す気もないものの、こうやって楽しい時間を積み重ねるのもいいかなと。
・いるかHotel、次は4月11日〜13日、KAVCホールで「木曜組曲」再演だそうな。またお声がかかるのかかからないのか。ともあれ、またまた楽しみなのです(*^_^*)
(2013/12/11まとめ書き)

入り込みたいような生き生きとした舞台!(演劇ラボラトリー 上田一軒プロジェクト「病は病は気からから」感想)
・11/17観劇。当日パンフレットにもあったとおり、これは「講座の発表会」ではなく「作品の上演」。ちゃんとした劇団の作品としても十分通用する、というよりもそれを大幅に超える素晴らしいクオリティのエンターテイメントでした!
・特に、役者一人一人の個性を見事に(あて書きで)書ききった台本がすごい!それぞれが単に面白いだけではなくて最後の戦いの時の役割の伏線?になっているのも見事。最後の最後に「しくしくさん(でしたっけ)」のオチまでついているのには感動。喜劇だけど、結構ほろっときたり。
・この演劇ラボ、いつもかなりの経験者が出ているのですが、今回もそうなのかなとか。私の知り合いのお二人も、それぞれに独特な味のある方ですが、見事にハマってました。ほかの知らない人でも多分こんな人なのかな〜と想像できたり。どこかあの世界に入っていきたいような温かさも感じたり。
・ものすごく細かいところまで建て込んだ(そしてそれぞれに意味のある)舞台装置にも感動。音響や照明も空気感の作り方がお見事でした。このシリーズ、いつもスタッフワークが素晴らしいんですが、今回もその流れは変わらず。アイホールの底力をいつも見せつけられます。
・演劇で演劇をテーマにするのは定番で若干ずるい感じがしないわけでもないものの、それを含めて存分に楽しめる作品であったのは間違いないです。今年の観劇ベスト3には入る名作であったと思います。この作品にかかわれた人は羨ましいなと、久しぶりに感じました。関係者の皆さん、お疲れ様でした。
(2013/12/11まとめ書き)

何かを抱えながらも、のびやかに生きていく女性の物語(太陽マジック「ゆらり」感想)
・11/23観劇。3本オムニバスかと思いきや、話がきっちり繋がっていたり。作・演出の言いたいことがしっかり伝わってくる、丁寧なつくりの作品。かなり東京的な感性も何処かに感じたり。
・「ゆうかい」「らストの手紙」「りモコンがくれた時間」という3つの話をオムニバスで紡いでいきながら、実はすべてがつながっていたという組み立て。どこかホームコメディチックな1章、朗読劇を見せきった2章、そしてテンポ良く走り切った3章。お見事。
・役者さんは劇団出身でない人もいるのか、1章はどこかやり取りにぎこちなさというか、かみ合わなさを感じたり。演出かもしれないが。一方、朗読劇の2章は山口景子氏と堤匡孝氏のやり取りにとにかく圧倒され、その流れのまま3章に入っていく。母との子の愛情、そしてその継承が構成に反映している。
・東京に出てきて苦労しながら女優を続けている(実際にはフリーターしかできていない)琴美は、今回の観客のメイン層である若い女性たちを想定しているのかなとか。若干丁寧すぎるほど丁寧な描き方も、それほどお芝居になじみがない人が見ることを想定しているのかもしれない。ある意味親切なお芝居。
・東京だからレベルが高いとは思いたくないけど、若干ベタな抒情性とわかりやすいストーリー、そして演出家の訴えたいことを素直に表出する芝居というのは明らかに私の好み。もし機会があればまた見に行きたいなと。今回お誘いいただいた大学時代の友人に感謝。
・ちなみに、好きな劇団として彗星マジックをよく上げるんですが、太陽マジックもなかなか好みかも。似たような劇団名にしたところで、どこか相通ずるものがあるのかも。
(2013/12/11まとめ書き)

年に1度のお祭りか、発表会か(インディペンデントシアタープロデュース「INDEPENDENT:13」感想)
・11/27観劇。いわゆる一人芝居フェス。1年に1度の演劇のお祭り。30分×11本はさすがに疲れるものの、やはり役者の力に圧倒される楽しい時間。今回は多少似た感じの作品が多かった気も。上演順のせいかもしれないが。
・好きだったのは、今回もやっぱり元気で元気をもらえた「シロとクロ」、バグと一瀬さんの新たな魅力を思い知った「10周年孤独乱交パーティー」、これぞ一人芝居といった熱演の「ヴァニシングポイント」。いまいち主題がわからず照明が過剰だった気もするが、「独楽アイソレーション」も嫌いではない。
・さらに、いいむろなおきさんの「short stories」や石原正一さんの「すみれほどなひと」は流石の名演技。こういったベテラン勢はフェスに不可欠なのだが、それ以外の作品の中にはトライアル最終戦よりもレベルが…というものも。トライアル枠の増加とかを考える時期なのかなとか。
・いずれにせよ、見るほうの体力も要求されるこのイベント。商標登録もされたようで、この関西初の取り組みが久しく続くとともに、全国でも親しまれていくといいなあとか、そんなことも思ったりしておりました。関係者の皆さま、お疲れ様でした。
(2013/12/11まとめ書き)

伝える思い、伝わる思い(この指とまれ「蒸発する万感」感想)
・12/8観劇。演出家や出演者にピッコロ関係者が多く、そのメンバーやら書いているFBやらツイッターやらを見て「おそらくドタバタ系のコメディ作品なんだろうな」と思いつつ席に着いたものの、いい意味で全く予想を裏切られ、硬派でよく作られていた作品であった。
・誤って地雷を踏んでしまった(足を離したら爆発してしまうので一切動けない)という究極状況に置かれた男と、その仲間2人の物語が中心。究極の状況とはいえシリアスではなくむしろコミカルなやりとり。しかし状況は日々悪化し、最終的にそれぞれが自力で脱出するという選択をする。
・これとまったく好対照なのが、「女子高生パート」。地雷原の3人が背景としてうずくまる中、一見、全く能天気な「秘密基地」での日々が描かれる。ただ、「国境なき医師団」の話や「発展途上国に学校を作りたい」という話で、どこかでこの2シーンがつながっていることが暗示される。
・圧巻なのは踏んだ地雷から足を外す、すなわち発展途上国に学校を作りたいという自分の夢がおそらくついえることを覚悟した時に須賀がつい口ずさんだ"Let it be(あるがままに)"の歌。それが女子高生ミドリにどこかで伝わってくる。
・男たちがどうなったかは描かれない。彼女たちもどんな人生を歩むかわからない。夢は夢のままかもしれない。それでも思いを持って、思いを伝えていけば、あとは「あるがままに」。この世界に対する一種の諦念と、だから故の希望とを実に丁寧に、決して押しつけがましくなく描いた好作品であった。
・どこまでが原作でどこからが潤色かわからないが、ジョンレノン忌にビートルズを持ってきたことも含めお見事。白い布をくしゃくしゃの状態で敷き詰めただけの舞台装置も、この冷たくも温かい世界を見事に描いており、高いセンスが光る。照明・音響は控えめだが、それもこの作品にあっていた。
・あえて言うならば、「この指とまれ」というユニット名と作品のシリアスさがあまりあっていない気がする。広報宣伝の面からも、ある程度、方向性を一致しておいたほうがいいのでは。チラシにあった「どうしよう 地雷ふんじゃった。」というキャッチフレーズも、正直シリアスとは取りにくいのでは。
・逆にいうとそのあたりの浮遊感が代表であるヨシザキカナ氏の持ち味なのかもしれず、それはそれで(外野的には)面白い気もしなくもない。ユニットながらスタッフ・キャストを募集してまた来年8月初旬に公演を打つそうで、そのあたりで方向性が見えてくるのかなと。それも楽しみ。お疲れ様でした。
(2013/12/11)

女性が描く、等身大の女性の物語(からここたち、「シンデレラ〜シュトルム ウント ドランク〜」感想)
・12/15観劇。いるかhotelで何度も見た作品だが、また違ったテイストに仕上がっており興味深い。いるかhotelが広がりと繋がりのある大きな世界を描いていたのに比べ、かかここたち、はより身近な等身大の世界を描いていた気も。
・シンデレラ(哲子)に20歳前後の女優さんを使ったいるかhotelと、もうちょっと年齢が上(?)であろう高田裕美さんを使ったからここたち、という違いもあるかも。二十歳前後の子がシンデレラに憧れるのはそれこそ夢物語で済むのだが、どんどん年月を重ねると現実として大きくのしかかる。
・そういう意味では、「太ってしまってもうガラスの靴が入らない」というシーンは非常に象徴的。そして、そんな自虐をしながらも凛として舞台に立つ高田裕美さんは、凛として非常に美しく、それがまた、このお芝居に一本の筋道を作っていた(しっかりとしたくぎを打っていた)ように思える。
・もともとわかりやすいテキストではなく、私も両方の版を見て初めて分かったところも。そういう意味では、はじめて「からここ版」だけを見た人には若干わかりにくかったのかなとか。説明的セリフを増やしているのもわかるのだが、このお話は説明すればするほど、初見の方は混乱する要素があるので…。
・舞台はめずらしく書割で、アリス風というかシンデレラ風というか。その絵や洋服ダンスの中から役者が一部、出はけできるようになっていた。私としては、全てを書割か洋服ダンスかにして、全ての出はけがそこから行われるほうが潔い気もするのだが…主題を変えてしまう危険性も高いけど。
・前回のいるかhotelの時にもイメージされていた「ダリのゆがんだ時計」が描かれていたのも印象的。この台本、読み込んでいくと、時を主題(というか背景)にしていると感じるんだろうなとか。偶然の一致なのか、もともとの舞台がそうなのか、ト書きにあるのか、何も知りませんが…。
・やはりこの作品は、女性の生き方や選択、そしてつながりを描いているんだろうなと。なので、男性が描くのと女性が描くのでは全然違って当然だし、それはそれで興味深いわけで、短い間隔で全く違う演出の同作品を見るのもなかなか楽しいなと、改めて感じたりもしました。みなさま、お疲れでした。
(2013/12/15)

わるくはないよね。(県立ピッコロ劇団「星つむぎの歌」感想)
・12/8観劇。夏に見た時とは相当に変わっており、どちらかといえば子どもにも理解しやすいように最大限の配慮がなされていた印象。その分、夏の粗削りながらも作者の訴えたいことががんがんと伝わってくる感じはかなりそがれてしまった感じ。演出家が変わったことによるもの?
・とはいえ、不条理劇ではないけど不条理な現実(ケンタくんだけ助からなかったこととか、何があっても紙芝居師とその妻は復縁しないこととか、琴子ちゃんが結局は孤独の身であること)は変わらず、単純なハッピーエンドでないというお話の大筋もそのままで、基本線はぶれていないという印象も。
・そして、そんな不条理な現実を「悪くはないよね」という言葉で共有していく登場人物が、かすかながらもしっかりとした願いのもとに、ともにこの世界を生きていく決意を示しているようで、つい涙を誘う。やはりこの作品は、単なるファミリー劇場にとどまらない何かがあったなあと。
・主役・琴子ちゃん役の道幸千紗さんの舞台にすっと一人立つ姿が素敵。この作品自体、舞台化の企画は道幸氏によるものだったそうで、強い思いがあったのかなとか。また夏に比べると「海老蔵(山田裕氏)&ネコ(野秋裕香氏)」が大活躍し、そんなところもファミリー劇場色が強まった印象。
・いずれにせよ、「星つむぎの歌」の歌詞を舞台にすればこうなるんだろうな、こう伝えたかったんだろうなという思いは今回もシッカリと伝わってきました。この歌にさらにいろんな思いが重って歌われていきますように。そんなことも感じたのです。
(2013/12/23)

2013今年の舞台Best3、発表。
・さて、今年の舞台Best3、行きますかね。
・まずは、悪い芝居「春よ行くな」。嫌らしいまでに生々しい演技と、観客と役者の境界線の揺らぐ舞台装置、残酷なまでに時を切り取るバナー(が落ちてくる音)。そして何よりも、インディペンデントシアター2ndの搬出口をまるで映画の1シーンのように使ったラスト。いまだに脳裏に残っている。
・つぎに、県立ピッコロ劇団「間違いの喜劇〜現夢也双子戯劇〜」。プロの劇団と翻訳家と演出家とスタッフとが本気で「遊んだ」ことの凄み。でもそれを感じさせず、目が中途半端に超えた演劇酷評家まで鑑賞教室の中学生までみんなに受ける間口の広さ。シェイクスピアの凄さも改めて実感。
・最後に、演劇ラボラトリー上田一軒プロジェクト「病は病は気からから」。当日パンフどおり、これは「講座の発表会ではなく作品の上演」。技術の巧遅を超越して、舞台に携わる一人一人の強い思いがこの舞台と演劇への愛にあふれた作品をさらに奥深いものに。アイホールの底力も改めて実感。
・ということで、3作品の発表でした。ちなみに次点としては「星つむぎの歌(夏バージョン)〔ピッコロ劇団〕」「許される許されざるに拘らずただ足枷の花束を抱いて〔兎桃企画×劇的集団まわりみち'39×菅原ゆうき〕」「蒸発する万感〔この指とまれ〕」といったところです。
・また、あくまでも卒業公演ということで考慮から外しましたが、「新天地へ 〜ある移民の物語〜〔ピッコロ演劇学校研究科29期生卒業公演〕」も名作だったと思います。来年もいい作品に数多く出会えますように!それでは、また来年〜無事アフリカから帰ってこれましたら〜(*^_^*)
(2013/12/24)



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