日生(ひなせ)で中南米とカキオコの半日



     日生とかいて「ひなせ」。岡山県最東端の瀬戸内の港町です。
     歴史と格式のあるまち赤穂と、備前焼や日本刀のふるさと備前に挟まれて、
     いまいちパッとしなかったこの町が最近、B級グルメ「カキオコ」で脚光を浴びています。

     「カキオコ」とは文字通り、カキが具になったお好み焼きのこと。
     ただ、大阪風とも関西風とも違った食感であると聞きます。
     赤穂に行く前に、「カキオコ」でも体験してみるかと日生を訪れたのですが、
     そこで出会ったのは、中南米の素晴らしい遺品と小さくてもきらりと光る博物館でした。


写真など

日生駅 ひなせの文字 観光案内図
日生駅。播州赤穂・日生間は約15分。ちなみに、兵庫県最東端に「日生中央駅」があるが、あちらは「にっせいちゅうおう」であり、当然ながら無関係。 山に「ひなせ」の文字が作ってある。赤穂でも見かけたが、このあたりの自治体の趣味なのか。ちなみに、この山の向こう側が市街地。駅は外れになる。 日生は多くの島+ちょっとの対岸で構成。もともと海産物即売の「五味の市」である程度有名であったが、今やカキオコの町となってしまった。

     ・BIZEN中南米博物館へ。

博物館外観 1F ティオワカンの石像
街中で「BIZEN中南米美術館」という怪しい看板を発見。中南米好きとしては看過できず行ってみる。入館料が前に書いておらず怪しいが、意を決して中へ。 結局、入館料は500円。あんまり高くなかったので安心。入口は狭く、金額だけの価値があるか不安だったが、展示室はそこそこ広く、きれい。 ティオワカン(メキシコ)の石像。写真を撮っても良いというのはありがたいが、まあ、最初は、珍しいものだねといった程度の感想だった。
円筒形祭祀具 おろし器 脇役の土器たち
これはマヤ文明、古典期のグアテマラから出てきた円筒形祭祀具。メデューサみたい。このあたりを見ると、そこそこに面白いなという気がしてきた。 これは珍品。エクアドルの陶製「おろし器」。そもそも「おろし器」がワールドワイドなものとは知らなかった。おろすのは、大根?わさび?それとも別のもの? 「輝いた時代の大切な脇役」として、個別には展示されなった土器たちが、1Fの中央に集められていた。学芸員の愛を感じすにはいられない。

     ・ナスカ土器の世界へ。

ナスカへ パンパ(平原)猫 トロフィーが描かれたつぼ
なんとここで、私の大好きなナスカ土器の特別展示を行っていた。ナスカといえば地上絵ばかり有名だが、実は土器もとんでもない。その一端をご紹介。 パンパ(平原)猫。ナスカ土器の一つの柱は、こうした動物を描いたもの。パンパ猫は大地の力を表す偉大な神としてあがめられていたとのこと。 そしてこれが、ナスカ土器の有名な意匠である「首級(トロフィー)」。狩りとった敵の首をかたどったもの。デフォルメされているが、すごいデザインではある。
怪鳥が描かれた皿 そのものずばりのつぼ 戦士のコップ
この皿も怪鳥が首級をくわえている姿を描いているとのこと。首級は単に勝利の象徴のみならず、生死の循環を意味する宗教的な意味があったとのこと。 これはそのものずばり。過去、TBSがナスカ展を行っており、その際に同様の土器を数多く見、それ以来すっかりナスカ土器のファンになってしまった。 戦士を描いたコップとのことだが、このデフォルメは現在でも十分に通用する。周囲に書かれている豆のような絵は未解読の文字とのこと。
ちびまるこちゃん ジャガーの服を着た人のつぼ 漁夫のつぼ
学芸員が「ちびまるこちゃん」と名付けたそうだが、確かにそのまま。ナスカ土器の素朴さと面白さは、さくらももこのクラフトに相通じるものがある。 ジャガーの服をきた人物と、南米原産のトウガラシが描かれたつぼ。ナスカ土器は、こういう形自体が面白いものも多い。祭祀に使われたのだろうか。 かわいらしい動物の像に見えるが、額の部分に飾り(はちまき)をつけていることから漁夫と分かるのだそう。口につけているのは笛とのこと。
魚の描かれたつぼ サルのつぼ 太陽(?)のつぼ
現代的ともいえる魚の絵。私が昔から目をつけていたものにトンパ文字があり、これはすでにブレイクしたが、ナスカ土器はなかなかブレイクしない。 これがサルの壺だが、漁夫に比べるとあんまり可愛くない。かわいい、かわいくないで土器を評価するのもなんだが、ナスカ土器はそれだけ身近な感想をもたらす。 一生に一度ぐらい、1カ月休んでペルー・ボリビアを旅するのが昔からの夢。出世コースからも外れたことだし、来年か再来年にでも決行してみようかな。

     ・そして2階へ。

2F チョコレート カカオのつぼ
2Fは博物館らしくなく、ちょっとおしゃれな感じの空間。博物館を紹介した雑誌なども置いてあった。ここはなんとなく応援したくなる博物館である。 チョコレート(というかカカオ)はマヤでは神聖な飲み物だったそう。で、血に見せるために南米原産のトウガラシを混ぜたとか。どんな味だったのだろうか。 神聖なカカオをかたどったつぼ(?)。この一室はカカオをテーマにしてまとめられており、簡単だけれどもよく練られた構成になっていた。
自殺の神 写真撮影OK コパンの石柱
マヤの神々の中には自殺の神(イシュ・タプ)もおり、首をつった姿をしている。天国に行けるという信仰もあったそうで、自殺者も多かったとか。 ここはフラッシュさえ焚かなければ写真撮影OK。ここまで堂々と書いているところは珍しいのでは。私のはブログではないが、紹介させていただいた。 不気味に見えた外壁も実はすべて備前焼とのこと。500円とは思えない充実した展示、わかりやすい解説、そして学芸員の愛。お薦めの博物館である。

     ・そしていよいよ、カキオコの世界へ。

キャベツと粉を一緒にあける カキはたっぷりと カキオコ行列
当初予定を1時間近くオーバーして、カキオコへ。今回は、「ほり」さんへ。日生お好み焼きは、大阪風と違いキャベツがみじん切りでない。ざっくり千切りになっている。 この上に、カキをこれでもかと乗せていく。カキ自体もおいしいが、カキの風味が全体に移っていて、それが非常に味わい深い。こんなにおいしいとは知らなかった。 出てきたら長蛇の列。私の時は5人ぐらいだったが。他の店でも長い行列ができていた。土日は先手必勝、早め(10時〜11時)の攻略が必要なようである。



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