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僕の舞台技術学校日誌
1月(2010.1.6〜1.29)


22.1.6 卒業公演プラン研究3
 いつもの通学路を歩いていると、なんだかすごく久しぶりのような気が…。言っても10日ぶりなのだが、夏休み明けの9月以降、1週間以上間が空いたことがなかったのでは。ほんのり新鮮な気分で、ピッコロに。
 授業は、各自考えてきたプランを講師と演出家の前で発表。演出家が来るのが若干遅れ、さらに11人がみんなきっちりと発表するので、結局終わったのは午後10時頃。事務の方にも迷惑をかける結果となってしまった。仕事という麺では「一人○分以内」と限ってしまう方がよいのだろうが、まあ、芸術というのは時間を気にしていてはダメなのだろう。
 みんなかなり面白いプランだったものの、絵でも模型でも、何か具体的な形で示すように言われていたにもかかわらず、そこまで至っていない準備不足の人もちらほら…。正月休みだからといって完全に休める人ばかりではないものの、1週間以上の時間があったので、もうちょっと具体的なものを提示してほしかったところ。先生も同じ思いだったようで、翌日、翌々日は各自、プランを模型化することに。とはいえ、自分は元々模型で発表していたので、さあ何をしましょうかねと、ちょっと余裕なのでありました。

22.1.7 合同卒業公演顔合わせ→自習(?)
 前半は顔合わせ会。着いたところ、今回も1列目に舞台技術学校生が陣取っていた。前列中央から詰めろと言われたためとのことであったが、それだけ早い時間から来ているというのもまた事実であろう。私は2列目の真ん中当たりに座った。
 本科・研究科・技術学校合同での顔合わせは中間発表会と同じであり、違和感もないのだが、やはりスタッフ(講師陣)の数が全然違う。そして、1度公演をこなしてきたからか、学生側の雰囲気も全然違う。中間発表会の時のような、良く言えば素朴で、悪く言えばあまりにも場違いな質問もなかった。美術コースは既に十分卒業公演に取り掛かっているのだが、「いよいよ」という感を新たにすることができ、そう言う意味でも有意義であった。
 解散後、美術コースは別室で各々模型作り(の準備)。昨日が遅かったため、さくっと8時半作業終了→40分に片づけ終了。私は模型をもう一度作るのも何なので(それなりに考えて作ったので今更変えたくもないし)、汎用性のある劇場ボックスを作ることに。そうするとどうしても場所をとってしまい、取り回しが面倒くさかったり、周囲に迷惑かけたり。何となく不吉な予感もしたのでありました。

22.1.8 卒業公演プラン研究4
 この日はさくっと職場から退散するつもりが、玄関を出ると雨が降っており、一度傘を取りに帰ってしまったところ掴まってしまい、久しぶりにちょっとだけ遅刻。この日は模型作りの最終回。できなかった部分は各自自宅でやってくることとなった。
 前半は演出家(=作家)を交えて演出プランの確認。まだ台本が途中のため、今後の場面転換や必要な装置などについて聞く。演劇学校は女性が多く、また人数が多いにも関わらず全員に台詞がある役を割り振らないといけないため、台本を書くのも本当に大変そう。2日前のプラン発表もそれなりに影響を与えているようで、うれしい限り。
 後半は各自模型作り。スチレンボードやボンド、木材、発砲ブロックなどを分け合う。今はかなりのものが100円ショップで揃うらしい。模型作りは様々なものが少しずつ必要なため、ちょうど100円分ぐらいがジャストフィットな模様。海外にいると「ここに100円ショップがあれば…」と思うことがよくあるが、美術コースに来て改めて100円ショップのありがたさを知る。
 各自持って帰って作業することになったのだが、ここで問題になったのが、私の模型は劇場ボックスになっており、何とも大きいこと…。持って帰るだけなら何とかなるものの、果たしてできあがったものをどうやって持ってきたらよいのだろうか。こんな巨大なものを職場に持って行くのもなんだし…。持って帰る荷物が多いにもかかわらず、帰りの阪急電車は人身事故のため超満員で、なんとも幸先の悪い模型作り第二弾となってしまったのでありました。

22.1.13 卒業公演プラン研究5
 各自作成してきた模型の発表会。制作にも時間がかかったが、何が一番大変だったかといえばその運搬方法…。結局、家にある一番大きなトランクに入るように作り直し、事前に三宮駅の大型コインロッカーに入れてから仕事に行き、仕事後ピックアップして阪急に乗り、塚口駅からはピッコロまでごろごろ引っぱっていった。その姿を見た同級生によるとかなり怪しく見えたらしいが、確実な運搬のためには仕方ない。
 今回は、ほぼ全員が立派な模型を作製。まるでどこかのジオラマのように精巧なものや、シルバニアファミリーを彷彿とさせる出来の良いもの、大胆なもの、繊細なもの、具体的なもの、抽象的なもの、本当にいろんなものが出てきた。残念ながら運搬途中に壊れてしまった人もいたものの、相変わらずみんなの発想の豊かさにはびっくり。特に色彩感覚にあふれたプランには関心。自分にはあまりその感覚がないので、うらやましい限り。
 私はというと、正直、かなり大人しいプラン。出来るだけ大胆に行こうと考えていたものの、作りやすさや演技のしやすさなど、現実的な側面を重視したプランになってしまった気もする。現実を踏まえつつも、もう一歩踏み込んだプランを作れれば良かったのだが、なかなかそこまではいかなかったのが実際のところ…。実は今回のプラン、舞台の大きさや高さを決めるのに相当時間を費やしたのだが、多少考え過ぎた気もする。
 ともあれ、ここでプランはいったん演出家の手に渡り、20日に具体的な選定や指示がある予定。それまで宿題もほとんど無いので、しばらくは卒業公演から離れ、明日明後日は心おきなく歌謡ショー実習に取り組めるのでありました。

22.1.14 歌謡ショー実習リハーサル
 この日は歌謡ショー実習のリハーサル。歌謡ショー実習というのは30分のラジオ番組仕立てで歌謡ショーを行っていくもの。その内容上、美術コースはあまり関係なく、音響コースと照明コースのための授業という側面が大きい。というか、美術コースはすでにすっかり卒業公演モードなので、他のことをやっている余裕があまりないというのもある。例年、最後の最後だけ、参加させてもらうこととなっているようである。
 ちなみに、パーソナリティや実際に歌を歌うのはすべて研究科の皆さん。研究科とは、中間発表会を一緒にやって馴染みもあるので「また今回もよろしく」といったところ。とはいえ、今年の卒業公演は「本科+舞台技術学校」なので、研究科の皆さんと一緒に何かを作るのはこれが最後。そう考えるとちょっとさびしい部分もある。
 今回は曲のジャンルが本当に色々。和服を着ての“夜桜お七“に始まり、幻想的なダンスと共に“瑠璃色の地球”、「ハイカラさんが通る」のような羽織袴での“港の見える丘“、四季というよりは宝塚を彷彿とさせる“オペラ座の怪人”、最後は全員総出でaikoの"be master of life"。さすが研究科、みんな歌もうまく、ダンスも雰囲気に合っている。袖から見ている美術コース一同のテンションも否応なしに上がる。
 ただ、音響さんや照明さんにいろいろと不具合があったらしく、結局この日は通しのリハーサルが一回も無し。通しは明日の本番一発勝負になってしまった。今回美術コースにはそれほど大きな仕事はないのもの、私には一応舞台監督の役割を与えられており、ちょっとだけ不安な思いで翌日を迎えることとなったのでありました。

22.1.15 歌謡ショー実習本番
 いよいよ歌謡ショー実習の本番。この日はオープンキャンパスにもなっており、また多くの方が見に来てくれている。そして、自主練習を一旦中断して本科の方々も客席に来てくれた。やはり、いろんな人に見てもらうというのは、やる側の取り組み意欲にも関わってくる。
 この日の美術コース一番の見せ場はオペラ座の怪人でのドライアイス。私は知らなかったのだが、ドライアイスはスモーク(ロスコ)とは比べ物にならないほど高価とのこと。今回も約1分の分で2千円ちょいかかるらしい(1キロ約400円で6キロ分)。それだけにリハーサルもできず一発勝負。事前の練習できっかけを確認して、上手・下手に数人ずつスタンバイ。
 私自身は、今回、舞台監督ということで、幕の上げ下げなどを指示。それほどややこしくなく、また曲中など時間も多いので、焦る必要も全くなく、結構楽しみながらすることができた。途中、ロスコを出すのが少し遅れるというミスは有ったものの、概ね順調に推移。特に、ドライアイスは上手・下手の息がばっちり。すっーっと両側から舞台に流れて行き、劇的な曲をさらに劇的に彩ることができた。研究科の方々のおかげもあり、かなりいい舞台が作れたのではないかと思う。
 終了後はいつもの友人に加え、研究科の方と一緒に打ち上げ。その後、帰りの電車内で去年の卒業公演の話などを聞く。やはり卒業公演というのは本当に大変だが、それを一緒に乗り越えてきた仲間意識もとても強い様子。スタッフでそのような感激を得られるのかどうかは多少疑問なものの、とにかく今は目の前に迫ってきつつある卒業公演に向け、美術コース一同で取り組んでいかなくてはと、決意を新たにしたのでありました。

22.1.16〜17 特別講義「演劇的な言葉(?)」(欠席)
 この2日間は作家・演出家・俳優として活躍されている方の授業。ピッコロに非常に縁の深い方です(分かりますかね)。
 ところが、1日目はある演劇と重なり、2日目は1.17のため仕事。ということで、私は2日とも欠席。関係者のブログ等によると、それぞれ印象に残った言葉をあげてそれが発せられたシチュエーションを想像したり、各自が持ち寄った「ものすごく悲しかったこと」を合わせて一つのお芝居を作ったりと、なかなか頭を使う、面白い授業だった様子。舞台技術学校というよりは演劇学校向けの授業であるのは間違いないだろうが、ちょっと残念だったなと思ったりもしたのでありました。

22.1.19 特別講義「演劇について(タイトル忘れた…)」
 珍しい平日の特別講義。講師は、タレント・アイドルとして有名な、某新劇劇団の俳優さん。奥さんが元アイドルということでも有名かも。「なんでこいつが先生としてやってくるのか、自分だったらびっくりすると思いますが…」という言葉で始まったものの、聞くと、かなりしっかりとした演劇論をお持ちの方。芸能界の話も多少交えつつ、独特の話術で、2時間半近く、全く飽きさせることが無かった。
 いろいろと印象に残る言葉があったのだが、主なものを書き残しておくと、「美男子・美女というのは何の意味もない。オーラやエネルギー、華があるかどうかが魅力に繋がる」「どう見せようかと考えながらやっている演技は、他人に見せるに値しない」「(バラエティーであろうが歌番組であろうが)『自分は役者だからこの程度まで』と思ってやってはいけない。真剣にやることによって、何か得るものがある」「それぞれの分野で第一線で活躍している人はずっと夢を持ち続けている。ずっとやりたいことがある」「クラッシック音楽も芝居もさまざまな足かせ・障害があるが、むしろそれを乗り越えるエネルギーが観客を感動させる」「お客さんを馬鹿にしてはいけない。過度に説明的な表現はいらない」…などなど。言葉に書いてしまうと意外と平凡だが、それぞれに例が非常に分かりやすく、含蓄のあるものであった。
 最後に、受講生に対して「そもそも演劇をやろうとこんなところに来ていること自体が、スケベな心がある証拠。普通は思っていても実際に行動に移す人は少ない。でも移してしまった以上は、思いっきりやってほしい。人一人が生きている時間というのはほんの一瞬。好奇心を旺盛にして様々なことに取り組んで、最後は『まだまだやりたいないけど、結構いろんなことをやってきて終わったなあ』と思って死ねるように」との言葉。私自身の考え方もかなりこれにちかいが、それを多くの人に直接、厭味でなく伝えられるというのは、俳優として技術もさることながら、やはり彼自身の人生がそうだったからなのであろう。私自身、「なんであの人が…」と最初は思っていたのを大いに反省。卒業公演に向かって、とてもいいスタートを切る道しるべとなるような特別講義だったのでありました。

22.1.20 卒業公演プラン研究6
 1週間ぶりの授業。間に歌謡ショー実習を挟んだため、なんだか非常に久しぶりのような気が…。
 演出家を交えて、基本的なプランを決定。今回は、私のプランがかなり採用された。とはいえ、直線的・無機質な雰囲気は嫌とのことで、雰囲気自体は別の人のプランに合わせることに。まあ、そのあたりも含めて何とでも対応可能な汎用性の高さが、私のプラン採用の大きな原因なのであろう。
 ということで、さっそく、具体的な仕様や装飾を考えていくことになったのだが…これも諸事情(というか話の成り行き)で、私だけ、同じコースの人とほとんど関わらない特殊効果を担当することに。あまり書いてしまうとばればれなのだが、オープニングの数分だけ登場する装置の担当になってしまった。最初は安請け合いしてしまったものの、よく考えると、下手をすると莫大なお金がかかるし、照明さんとか舞台監督さんとかとの調整も必要だし、電源のことなども考えなければいけないし、なかなか大変。こつこつ模型作り・図面引きの方が楽しかったのではあるが…まあ、これも試練ということで、頑張らせてもらうことにしたのでありました。

22.1.27 卒業公演プラン研究7
 仕事のため30分ばかり遅刻。先週の卒業プラン研究6で決定したそれぞれの担当に従って、その模型と図面を作成していく。そして、作成中に分からなくなったことは演出家を捕まえてその場で確認。少しずつ形になってきた。
 とはいえ、一番メインの装置を作るペアは本当に大変そう。演出家の先生との議論も熱が入る。一方、私の方はかなり気軽。自分の装置はほとんど作ることもなさそうなので…。まあ、どんな種類がいいかなどを打ち合わせておく。
 この回は基本的には作業だったので特に書くこともないのだが…一番おもしろかったのは装置を装飾するのに「きな粉」を使ってきた人がいたこと。確かに独特の質感は非常によく出ているのだが、近づくと明らかにきな粉の匂いがする。冬なので腐ることはないと思うのだが…。まあ、面白いのは面白かったが、ちょっと不測の事態が発生しかねない雰囲気も感じるのでありました。

22.1.29 卒業公演プラン研究8
 引き続き、模型づくりと図面作製。私自身は、家で多少作ってきていたので、それを具体的に飾り付けていく。
 ところが、なぜか取り付け順序を間違ってしまい、一度つけたのに再度全てはずしてつけ直し。それも1度では直らず、2度も。正直自分自身が信じられなくない状況に。とはいえ、いろいろと試行錯誤したことで、逆に今のプランの優位性を再確認。図らずもだったが、ああいう試行錯誤も必要な作業だったのかもしれない。
 私自身は簡単な内容だったが、予算との兼ね合いや納入時期などが一番の問題。事務サイドとの打ち合わせを行ったり、予算や時間の足らない時の代替案を考えたりと、ちょっと他の人とは違った動きになっている。まあ、実現(現実化)に向けての努力という点では一緒だと思って、与えられた仕事をこつこつこなそうと心に決めたのでありました。

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