第六の謎

なぜ、池の鯉をとったら除籍なのか?


 筑波大学は他の大学に比べても学生の管理が厳しいと言われる。
 たとえば普通の大学なら至る所に見られる立て看板やビラは、筑波大学では一切禁止。それどころか、学内での政治活動・宗教活動もいっさいダメ。学園祭で政治家を呼ぶのも全く御法度。また、大学のくせにクラスがあり、担任までいる。「学内公安」と揶揄された学生担当教官という人々が筑波大にはおり、1学ペデストリアン横の学内でもっとも目立つところに事務所を構えて、学生の活動や動きを常に見張っている。また年間15単位を取れないと即除籍という非常に厳しい制度もあった。このような事実の他にも、「学内にある池の鯉を捕ったら除籍」「学内の地下に張り巡らされている地下道に忍び込んだら除籍」などといった、様々な伝説が筑波大学には残っている。
 除籍というのは、その人が大学にいたという過去をも消してしまう、すなわち、その人の学籍簿から何から消してしまうと言うことである。実はこの措置は、懲戒行為としては明らかに法律違反の規定なのである。そこまでしても学生を管理したかったというのは、やはり筑波大学がただの大学ではないことをよく示している。

 ところで、日本の国立大学には2種類の大学があることをご存じだろうか。「帝大」と「駅弁」とか、「女子大」と「共学」と答えるかもしれない。しかし、実は違う。日本には「筑波大学以外の大学」と「筑波大学」が存在するのである。冗談だと思われるかもしれないが、それならば「国立学校設置法」を見てみればよい。ちゃんと、「大学」とは別に「筑波大学」の章がある。(これは本当の話で、この部分がいわゆる筑波大学法案、衆議院で強行採決されたものです。)筑波大学の特殊性は単に大学が決めたと言うよりもむしろ、文部省、もっといえば国が決めたものなのである。
 この「筑波の謎」の読者なら、なぜ筑波大学がこれほど厳しい学生管理をしているのかもうおわかりだろう。筑波大学はいざというときに皇居になるべき場所である。天皇制反対の学生がいたりしては困るのである。さらに、皇居になるべき場所であるから、いつもきれいに保っておく必要がある。そのため、ビラや立て看板は御法度とされた。また、石畳を敷き詰めた広場を大学の中心部、中央図書館前に作り、いつでもヘリコプターが発着できるようにしてある。普段の利用という点から考えると石畳を敷き詰めた広場は使い道がないし、雨が降ると転びやすくて困りものなのであるが、このような理由なのでしょうがないのである。意味のない噴水とかも、皇居としての華やかさを少しは出すために存在するのである。
 また、いざというときに篭城できるように、農場も筑波大学内にある。普段は農学の研究と言うことになっているが、それにしては立派な農場であり、また飼育している家畜も多い。このような作物や家畜も有事の際には天皇家の食卓に並ぶことになるのである。これは、正式に研究用として飼育されている動物に限った話ではない。たとえば、第二学群と第三学群の間にある池の鯉もいざというときには食料となるものである。つまり、これらの動物はいわば皇室の財産なのである。単に池の鯉を捕まえただけで除籍というのはいまいち腑に落ちない感じだが、皇室の財産を勝手にとったとなればそれは非常に不敬なことであり、除籍もやむ終えないだろう。
 このほかにも筑波大には、いざというときに脱走できるように地下道が張り巡らされている。この地下道はいざというときには防空壕としてもしようできるものらしい。筑波大学内を走るループ道路脇に何カ所か怪しい入り口があるので、筑波大に来られたときは是非見ておくと良いだろう。もちろん、大学の様々な建物からも直接地下道に行けるようになっている。たとえば、第二学群C棟のエレベーターをご存じだろうか。エレベーターはちゃんとあるくせに押すべきボタンが1個も無く、全く使えない状態になっている。何でこうなっているか分からなかったが、実はこのエレベータこそが秘密の地下道への入り口であり、特殊なリモコンによってのみ使えるのである。二学C棟には学類長室などが多く、いざというときに逃げ出せるようにしているのであろう。他学群についてはまだ調査を行っていないが、同様のシステムがあることが予測できる。
 ほかにも、迷路のような筑波大学の建物配置、1階にいたと思っていてもいつのまにか2階になってしまう独特の構造など、これらどれをとっても筑波大学がいかに要塞化を中心に計画されたかが良く分かる。しかし、そのために平時に暮らしている私たちには不便なところも多いのだが.... 。

 先日、茨城県で世界湖沼会議が開かれ、筑波大学が会場となった。そのため、皇太子殿下と雅子様が筑波大学を訪れになった。私はミーハーなので、わざわざお二人の姿を見に行ったのである。そして、その気品と優雅さにあふれる姿を見るにつけても、彼らがここで暮らさなくてはいけない日が決して来ないでほしいと、ただただ祈らずにはいられなかったのである....。

 



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これはフィクションです。おそらくフィクションだと思うのですが...。
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